帳簿と記録の義務

介護タクシーの監査は、新規開業者こそ入口に立っている — 処分は「軽い注意」では済まなかった

前の記事で、私は自分がこの車の記録を何も残していなかった、という話を書きました。調べてみると、記録には作成義務がある。そこまでは分かりました。

でも、そのときの私には、まだどこか甘えがありました。義務だとしても、もし何か言われるとしても、「気をつけてくださいね」と注意される程度だろう。書類を直せばすぐ終わる、その程度のものだろう、と。

書いているのは、関東で介護タクシーを営む現役の個人事業主です。

「軽い注意」だと思っていた

その甘えが消えたのは、実際に公表されているデータを見たときでした。

私たちのような事業者への行政処分は、毎月、公表されています。事業の種類ごとに分かれていて、タクシーの欄もある。そこを開いてみて、私は自分の認識が間違っていたことを知りました。

並んでいたのは、文書による警告だけではありませんでした。一定期間、車を使ってはいけないという使用停止。それも、短いものばかりではなく、長期間にわたるもの。さらには、事業そのものの停止や、許可の取り消しまで。「気をつけてくださいね」では、まったくなかったのです。

これを見て、正直に思いました。もし今、自分のところに監査が来たら。記録を残していない私は、間違いなく、いくつもの違反を指摘されることになる。

後から作る、ということができない

では、その監査はどんなときに来るのか。私はそこも調べました。

分かったのは、監査は、事前の連絡なく行われるものがある、ということです。ある日突然、確認が始まる。そうなると、「これから帳簿を整えます」では間に合わない。記録は、日々つけていなければ、後からまとめて作れるものではないのです。残していなかった期間は、残していなかった、という事実として、そこに残る。

そしてもう一つ、私には甘い見込みがありました。新規で始めたばかりの、小さな事業所のところになんて、わざわざ監査は来ないだろう、と。

これも、違いました。

新規開業者こそ、対象に挙げられている

監査の対象になる事業者の中に、新規で許可を受けた事業者が、はっきりと挙げられていました。

つまり、開業したばかりであることは、「だから大丈夫」ではなく、むしろ監査の入口の一つだったのです。許可を受けて間もない私のような立場は、見逃される側ではなく、見られる側だった。個人だから、小さいから、ということも関係ありませんでした。公表されているデータには、個人で営む事業者が処分を受けた例も、確かにありました。

知らないまま走っていた私は、自分が思っていたより、ずっと無防備なところに立っていたわけです。

確率は低い。でも、それは理由にならない

ここで一つ、正直に書いておきたいことがあります。監査が来て処分を受ける事業者の数は、全体から見れば、決して多くはありません。割合でいえば、ごくわずかです。だから「めったに来ないなら、気にしなくていい」という考え方も、あるのかもしれません。

でも、私はそうは思えませんでした。

確率が低いことと、備えなくていいことは、別の話です。めったに当たらないとしても、もし当たれば、長期間車を止められ、小さな事業者である私にとっては、それは事業を続けられるかどうか、という話になる。低い確率と引き換えにできる軽さではない、と私は感じました。

だから、面倒でも、一つずつ整えていくしかない。そう腹をくくりました。次からは、その「一つずつ」——どんな記録を、どう残していくのか——を、私が実際に向き合った順番で書いていきます。

※この記事は、私自身が公表資料を調べ、自分の事業に引きつけて考えたことを記したものです。監査や行政処分の正確な基準・最新の内容は、管轄の運輸支局や国土交通省の公式情報でご確認ください。